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ことばの話>その他>フィクション>創作民話 雪女 パート V − 凍らせるのが趣味の雪女の巻 − 岡安裕司 とある山中に雪女がひとり棲んでいた。歳はさほど若くはなかったが スタイル抜群、柳腰、しゃなりしゃなり歩く姿はさながら白い百合のよう、 でも心は特別冷酷で、人を凍らせることを趣味にしているのだった。 冬のある日、雪女は山中の小屋で一夜を明かすことになった若い夫婦を見つけ、 夜が更けてから喜び勇んで小屋に忍び込んだ。 (ふふん、よく眠っていること。このまま凍らせちゃうのも面白いけど、 やっぱり起こしてたっぷり怖がらせてからのほうが楽しいわ) そう思って雪女がふたりを起こそうと屈み込んだその途端、腰のあたりでゴキっ という音がして背中から頭に猛烈な痛みが走った。 「うぎゃー」 雪女は思わず叫び声をあげ、若い夫婦が驚いて飛び起きた。 見るとそこに白い着物を着た髪の長い女が片手を床に付いてじっと 屈み込んでいる。亭主はその姿にぞおっとしたが、なんとか声を絞り出して言った。 「だ、だれだてめえは?そこで、んな、なにしてるだ?」 「え?いえその・・・ひょっとしてあなたがたはここで白い着物を着たすごく 綺麗な女が屈み込んで片手を付いていると思ってるでしょ。でしょ? でもそれは間違えです。単なる目の錯覚にほかなりません。 きっと寝ぼけているので早くお眠りなさい」 「なに言うだ、錯覚なんかでねえだ。わしらふたりとも見えてるだ」「そうよ、 それに少なくともたいして綺麗な女じゃないわよね」 「お、おめえ雪女じゃろ。なんでそんなとこで凍り付いてるだ?」 「いやその、屈み込んだら腰がゴキっとなったりして・・」 「ははあ、そりゃぎっくり腰だて」 「ぎっくり腰?」 「そうさ、最近なんか腰に無理なことしたべ?」 「そう言えばきのう生意気な狐に大きな岩をぶん投げてやったけど、 そのとき腰に違和感が」 「それだ!そん時腰の具合がおかしくなって、今屈み込んだ拍子にゴキっときただ」 「ねえおまえさん」若い女房が言った。「こいつ、だから動けないんでしょ? 縄でふん縛って見世物に出したらどうだろか」 「そりゃあいい。きっと大儲けができるじゃろ」 「きっと長者さまになれるじゃろ」 そうしようそうしよう、とふたりが立ち上がろうとすると雪女が言った。 「あんたたち、なんか忘れてるでしょ。あたしは雪女よ。ざけんじゃないわよ。 すぐ凍らせてやるからね」 この言葉を聞いて若い夫婦はアッ! と後ろにのけぞって床に腰を付いた。 それを見た雪女がにたりと笑う。至福の瞬間(とき)だ。 しかし喜び勇んで息を吐いたが、 「ひいヒュー・・ひいヒュー」 腰が痛くて力が入らない。 「なんだなんだ、口ばっかしでねえか」「やっぱり見世物ゆきだよおまえさん」 そうだそうだと夫が小屋の隅から縄を持ってくると 「どうせ動けないんだからさ、ちょいといたぶってやりましょうよ」 女房がそう言って片方の手で雪女の頬っぺたを引っ張った。 「なにすんのよ。やめなさいよね」 しかし女房はさらに両手で雪女の頬っぺたを引っ張った。 「やめなさいって言ってるでしょ。手を放しなさいよね」 これを見て夫も雪女の左の袖に腕を突っ込んでこちょこちょくすぐり始めた。 女房も右の袖に腕を突っ込んで一緒にこちょこちょくすぐった。 雪女は必死に笑いをこらえて脂汗をたらたらと流した。 やがて女房は雪女の着物の裾を広げると腕を突っ込み、指で股間の毛を摘んで ぴゅっと引っ張った。 「痛ああ〜! 駄目!そんなとこ引っ張るのはやめましょう。この健全なマガジンに 相応しくありません」 しかし夫も一緒になってふたりでぴゅっぴゅぴゅっぴゅ引っ張った。 しばらくして女房はごっそり毛を掴むと渾身の力を籠めてぶちゅっと引っこ抜いた。 「あぎゃー」 雪女は大声で叫び、おもわず大きく息を吸い込むと一瞬目の前が真っ暗になった。 そして我に返ると、 目の前には夫婦があっと口を開けたまま、亀の子のように仰向けに転がっていた。 こうして雪女と若い夫婦は山中の小屋の中でみんなして凍り付いてしまった。 とさ。 (おわり) あとがき この話は浴室でシャワーを浴びてる時に考えた話です。シャワーを浴びてる時は 暇ですからたまにその間に記事ができちゃうことがあります。 これでお金になるのでしたら言うことはないのですが(もちろん完成までには 苦労するケースも多いです)、残念ながら今のところ一銭にもなりません。 みなさんが読んでくださることが唯一の喜びです。 二00八年もことばの話を何卒よろしく。 今年も読者の皆様とご家族のご健康をお祈りし、 ついでに私のご健康もお祈りして二00七年の締めくくり (二00八年の幕開け?)といたします。 どうぞ良い年をお迎えください。 ** バックナンバー・ピックアップ ** − 2006年の年末記事 年越しそばの由来 http://kotoba-back.at.webry.info/200706/article_35.html − 過去のお正月記事 ・ 短い犬の話 http://kotoba-back.at.webry.info/200706/article_13.html ・ 猪突猛進――猪は急に止まれない? http://kotoba-back.at.webry.info/200706/article_36.html − 正月に少し関連する記事 ・ 夏、浴衣で食事を楽しもう http://kotoba-back.at.webry.info/200707/article_3.html ・ 下駄と深川芸者の関係 http://kotoba-back.at.webry.info/200708/article_1.html − 雪女シリーズ: http://kotoba-back.at.webry.info/200706/article_45.html http://kotoba-back.at.webry.info/200706/article_47.html http://kotoba-back.at.webry.info/200710/article_1.html http://kotoba-back.at.webry.info/200711/article_1.html 【発行者プロフィール】 岡安裕司 1900年代後半東京原宿の竹下通り生まれ。血液型不明。 東京農工大卒業後、セールス・エンジニアを経て翻訳家に転向、以後技術文書、 文芸作品の翻訳に従事するフリーランサー(正しくはフリー・ランス、私訳: 風来坊)。 訳書に「フランク・ロイド・ライト 建築家達への手紙」(1)(丸善)、 「遠い国の犯罪」「結晶する魂」(以上早川書房)など。 2007 12/29発行 |
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お気に入り動画@ストック,雪女 パート ... 2008/01/27 20:02 |
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TameCom 車関連ニュース,雪女 パ... 2008/01/27 21:47 |
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