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<<   作成日時 : 2007/08/16 00:23   >>

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ことばの話>文化>服飾

       下駄と深川芸者の関係
    
                                     岡安裕司
 
夏の風物詩のひとつが浴衣なら、それを粋(いき)に演出するのが下駄である。
その音も、風鈴ほどではないけれど、夏の耳には涼しげに響く。

でも、冬に浴衣は本人も寒いし見た目にも寒々しくてはた迷惑だが、
下駄は季節を問わない。

白い雪と黒塗りの下駄に赤い鼻緒のコントラストは美くしく、
日本家屋の玄関先に脱いで置かれた下駄にも、ふと見れば風情を感じるものだ。

下駄は日本を代表する服飾文化のひとつであり、湿気の多い我が国に於いては水虫
予防に絶大な効果がありその他足の健康にはもちろん身体に様々な健康効果があって
なおかつ身長を高く見せ足・脚が鍛えられ鉄の下駄にすれば効果倍増さらに履くのも
脱ぐのも簡単手入れも簡単で履いているうちに艶が出て風合いも生まれる。

そしてまだ今のうちなら男も女も大概の国ではどんな高級レストランといえども
浴衣に素足に下駄姿で堂々と入ることが出来るのだ。それどころか王様にだって
酋長にだってお目通り出来、賞賛の的になることだって少なくない。

(もちろんこれは浴衣が正装にはほど遠い―下着同然の服装である―ことに
まだ気付いていないからである。)

これだけのメリットのある履物なのだ。寒い地方を除けば温暖化で
しもやけの心配などなくなった現在、季節を問わずもっと利用されていいのでは
と思うのである。


ところで下駄といえば昔から二本歯が定番だが、江戸時代には歯が一本というのが
女性の場合普通だったらしい。といっても天狗が履くような一本歯の下駄ではない。
前の歯がつま先までアーチを描くぽっくり型のタイプである。

ところが大正時代に深川の芸者衆が二本歯の下駄を履いてカラコロと歩いた。
その粋な姿が評判となり、恐らくあっという間だったのだろう全国に広まった
のだそうだ。つまり彼女たちが下駄の常識を変える革命的な
ファッションリーダーとなった、というわけなのである。

深川が江戸城から辰巳の方角(東南)に位置するところから深川の芸者衆
(深川芸者)は辰巳芸者とも呼ばれた。粋で気風(きっぷ)が良くて
威勢の良さが売り物で、「辰巳芸者の心意気」なんていうことばもある。
また、お座敷に羽織を着て出たことから羽織芸者とも呼ばれた。

羽織は本来男が身に着けるもので女性が今のように外出着として着るように
なったのは明治以降のこと、これもまた深川芸者を真似てのことだったのだそうだ。


昔は芸者といえば一般女性からは社会的に差別されていたはずであるが、
一方でその粋な姿には女性として憧れもあったのだろう。だからこそ
ファッションリーダーとしてこのようにいくたびも文化大革命の火付け役を
演じてきたのに違いない。


下駄はつま先から行くと歩きにくい。かかとが先に地面に着くようにすれば
歩きやすく形もよく、カラコロと粋な姿も演出してくれるはずである。
みなさんも二本歯の下駄を履いて粋にカラコロ歩いてみませんか、
ってなんだか下駄屋さんの回し者みたいだろうか。

あとがき
 父が深川の生まれで先祖代々の墓が深川にある。私はそのお墓参りに時々行ったり
清澄庭園に野鳥を観に行ったりした程度であまり深川に馴染みはなく、
父は次男だったからお墓にも随分足を運んでいない。
 それでも深川ということばを聞くと父や叔母の出身地だからアンテナがピンと
立つようで、羽織を除いてこんな話も記憶しているというわけなのである。
 深川は今も下町情緒の残る町だが、辰巳芸者は今では夏の深川祭りでしか
お目にかかれないそうだ。


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 ことばのコラム  No.2

 おかしな日本語「汚名挽回」

けっこう間違える人が多いようです。

挽回とは「失ったものをとりかえすこと」「回復すること」。
汚名を挽回したのでは、どうにも仕方がありません。

挽回するのは名誉。汚名は返上しなければいけません。

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<2007 7/29発行>

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